2020シーズンのフベロ磐田を総括するPart①

新シーズン開幕直前となってしまいましたが、ここで昨シーズンのフベロ体制を一度総括したいと思います。
まずここまで遅れてしまったことに関して、このテーマを待っていてくれた読者の皆さんには申し訳無い気持ちで一杯です。



フベロ監督は歴代のジュビロの監督の中で、特に緻密で計算されたサッカーをして、現代的な戦術をチームに落とし込もうとした極めて貴重な監督さんだった(合格することが非常に難しいUEFAプロライセンス保持者)と思っていますが、残念ながら1年でのJ1復帰というミッションは難しく、成績不振という形で解任されました。


これまで散々フベロサッカーの良いところを書いてきたと思いますので、今回はフベロサッカーの何が上手くいかなかったのか、それはどうしてか、そこを掘り下げてまとめたいと思います。

簡潔にまとめるのは非常に難しく、困難な作業でした。それだけフベロサッカーはモダンなサッカーであって、私もまだまだこれから勉強していく途中だと思っていた戦術でしたのでああいった形で監督が解任されてしまったのは本当に残念です。


それでは始めます。

-INDEX-

(1)2020年のフベロ磐田を3つの時期に分けて考える
(2)采配傾向

(1)2020年のフベロ磐田を3つの時期に分けて考える

まず昨シーズンのフベロ磐田を3つの時期に分けて考えたいです。

①4-4-2ポジショナル(上原サリーダ)

②3-4-3ハイプレス(フベロ監督のプランB)

③謎の5バック期
→解任直前、本来の4-4-2ポジショナルに戻す



2019シーズンJ1で残留争いをしていたフベロ磐田は4-4-2を軸に主に上原力也がCBまで落ちるサリーダデバロンで可変しながらビルドアップしていくスタイルを構築しながら戦いました。


2019シーズンの4-4-2と2020シーズンの4-4-2の大きな違いの一つに2トップはルキアンのCFとセカンドトップにアダイウトンや藤川の組み合わせではなく、
小川航基がレンタルバックで帰ってきたので小川航基をCFに、ルキアンはどちらかと言うとアダイウトンがやっていたようなウインガーのようなタスクを任されることになりました。


2020シーズンの開幕戦からしばらくはこの4-4-2でしたが、フベロ監督はリーグ戦の早い段階で新システム3-4-3を導入しました。

小野社長が2019シーズンの終わりに「J1とJ2は違う」と言ってフベロ監督続投を即決しなかったように、J2では割り切って守備を固めて引いてくる相手がいるという状況が増えるであろうという中でフベロ監督が示した解決策(プランB)がこの3-4-3のハイプレスです。



ビルドアップからのセットオフェンスではなく激しい守備からのトランジションを重視して相手が守備を固める前にシュートまで到達するスタイルに切り替え始めました。この頃から2ボランチのうち前目のインテリオールは山本康裕ではなく山田大記やムサエフが起用されるようになりました。



しかし夏場の酷暑と、パンデミックによる超過密日程での選手たちの疲労の蓄積、コンディション不良が重なり90分間通してこのトランジション重視のハイプレス戦術は真夏に向かうにつれ上手くいかなくなってきました。

監督はそれでもターンオーバーを駆使して怪我人をほぼ出さずに日程を消化していきましたが、思うように勝ち点が伸びていかず、連勝も出せませんでした。



そして監督が解任される数試合前から、ジュビロのスタイルは3-4-3のハイプレスではなく自分たちで端からビルドアップを諦めたようなスタイルの謎の5バック期に突入します。

ビルドアップも出来ず、受け身でズルズルと自陣に下がるシーンが極端に増え、ゾーン2から前進することが出来なくなっていきました。



過密日程と疲労を考慮してそういった時間帯も敢えて良しとするプランだったかと思えば、監督の試合後インタビューでそうではない趣旨のコメントがあったためこれは恐らく選手たちの要望というか、戦い方を変えて欲しいと監督に直訴があったと推測します。　

実際監督解任後複数の選手たちがフベロ監督の戦術を批判するようなコメントがメディアから出てきて、解任直前の試合では本来の4-4-2に戻したことを考えれば、この謎の5バック期は監督と選手たちの間で大きな溝が生まれていたと予想します。

(2)采配傾向

次にフベロ監督の采配傾向を個人的な視点でまとめたいと思います。



まずフベロ監督はモダンな監督らしく、チームにアンタッチャブルな選手を作りませんでした。

例えばフベロ監督の元急成長しプレーの質自体がそれまでと比べて大きく変わった上原力也はサリーダデバロンの中心であり主役選手でしたが、

フベロ監督は彼をピボーテ(アンカー、中盤の底)に固定することはしませんでした。


私の中では上原の適正ポジションはピボーテ(アンカー、中盤の底)だと思っていましたが、監督は上原を一列前のインテリオールで起用したりしましたし、逆にピボーテには山本康裕が入ったり、針谷や伊藤洋輝が入ることもありました。

小川大貴も適正ポジションは間違いなく右サイドだと思いますが、左サイドで起用し右には他の選手を起用することもありました。

これはなぜかというと、モダンサッカーの考え方で一人のスペシャルな選手に頼らない、チームの軸は選手ではなく、あくまで戦術でありゲームモデルだという考え方に基づくものだと思っています。



例えばスペシャルな選手がそのチームの軸になっていると、もしその選手が大怪我で離脱したり、移籍で国内外のクラブに引き抜かれてしまった場合急激にチームが機能しなくなり弱体化してしまう恐れがあります。今のサッカー界は昔と違って非常に選手の移籍が活発なので、これはどのクラブにも起こり得ることです。


それを防ぐために、今のヨーロッパの監督たちは一人のスペシャルな選手に頼り切るサッカーではなく、そのクラブの哲学に基づいたゲームモデルを作って選手たちが同じ大きさの歯車になるようにチームビルディングしていきます。


同じ大きさの歯車なら、一つ欠けた場合の穴埋めは容易だからです。

10年～20年に一度しか出てこない逸材、天才的なタレントの代わりはそう簡単に見つからないので、ゲームモデルとタスクに当てはまるような選手を補強するなり、育成で台頭させていけば主力の大怪我や引き抜きが起きてもチームは弱体化せず、むしろ何世代に渡って強さを維持出来る可能性が高まるからです。


鹿島アントラーズがまさに今伝統的なブラジル型からヨーロッパのモダンなやり方に変えているところですが、狙いは同じことだと思います。


ジュビロの例を上げれば、もし上原をピボーテで固定して戦っていたらもっと短期的に勝ち点を増やせたかもしれませんが、固定した分怪我のリスクが増えたり、他クラブに引き抜かれた時サリーダデバロンが機能しなくなる可能性がありました。

それを避けるためにフベロ監督は選手たちに複数のポジションとタスクを与えて、将来を見据えながら怪我によるアクシデントや移籍に備えたチーム全体の底上げを狙っていたと思っています。(もし将来的に上原が抜けてもピボーテは山本康裕が出来る、ハリーが出来る、伊藤洋輝が出来る等)



例えば名波ジュビロで言えば、2016シーズンに絶対的司令塔にまで成長したトップ下小林祐希のオランダ移籍後、2018シーズンの絶対的司令塔中村俊輔の手術後のコンディション不良、怪我の再発、アダイウトンの大怪我等、スペシャルで替えの効かない中心選手が欠けてしまっあとは必ずチームは苦しい戦いが続いてしまったのを見てきた中で、


フベロ監督の采配はこれを避けるためにはどうすればいいかの解決策として非常に納得できるものでしたが、


一方でデメリットとしては目に見える結果を得るには時間が必要で、長期的スパンでじっくりとチーム作りをしていく必要があったということでした。徳島のリカルド・ロドリゲス監督もゲームモデルを軸にJ1昇格まで4年の月日をかけています。



しかし磐田の最大のミッションは1年でのJ1復帰でしたので、これを同時並行で、しかもあのパンデミックによる過密日程も重なったのでフベロ監督が掲げた目標の難易度は相当上がってしまったと思います。

更にジュビロは高齢化してるポジションもあったので、そこの世代交代まで同時にやっていく必要がありました。



→Next

問題①相手に対策されていた
問題②主力と控えに明らかな実力差、戦術理解度の差があった
問題③FWの決定力不足(ゴール期待値と実数)
問題④セットプレーからの失点癖



案の定長くなってしまったため一度ここで区切ります。是非最後までご覧いただけると幸いです。










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-Author Profile 管理人けいす-

左利き・東京都生まれ
静岡には一度も住んだことはないが小学1年生の頃に親にジュビロキャップを買ってもらい
そこからジュビロを好きになる

98フランスW杯で名波浩、ゴン中山、中田英寿に魅了され一層サッカー好きになる

学生時代のポジションはLWB、LB、CB(3CB左ストッパー)、DMF

大学時代はフットサル・草サッカーサークルでベッキ・ゴレイロでプレー

海外サッカーはここ数年専らイングランドプレミアリーグがお気に入り(贔屓目クラブは特に無し)
Football Managerシリーズ愛好家。(愛機は自作のWindows10)
HIPHOPヘッズ。



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